5月21日に放送された星組全国ツアー公演『バレンシアの熱い花』に合わせてなのか、
スカイステージでは先週一週間、毎日過去の『バレンシアの熱い花』が放送されていました。
初演の放送もあり、とても懐かしかったです。
今日は、今回の全国ツアー公演で瀬央ゆりあさんが演じたラモンについてお話ししたいと思います。
演者により印象が大きく変わる役
初演以来40年ぶりに『バレンシアの熱い花』を観た時の違和感については、以前お話ししました。
2016年の宙組版を観劇後、何度となく見て違和感はやや薄れ、今は柴田先生の世界観を楽しみながら観るようにしています。
今回の星組全国ツアー公演『バレンシアの熱い花』の放送を見ながら思ったのですが、
ラモン・カルドス役は、演者の個性や役作りによって見え方が大きく変わってくる面白い役だなと。
主役のフェルナンド・デルバレス、共に復讐を果たそうとするロドリーゴ・グラナドス、
この二人は貴族なので、一貫して洗練された貴族らしい佇まいで、それは黒装束になっても醸し出す雰囲気は変わりません。
一方ラモンは、下町の酒場で働く気のいい男で、ちょっと粗削りなイメージもありますが、イサベラを想う気持ちは真剣。
コメディ的なパートも担っていますが、妹を失う悲劇的なお芝居もあり、
さらにフェルナンドたちと復讐に立ち向かう姿は凛々しくカッコいい。
役作りにいろいろな要素が含まれているので、どう演じるかでかなり個性が出ると思われます。
歴代ラモン
これまで以下の方々がラモンを演じてきました。
- 1976年(月組)順みつき
- 1979年(月組)順みつき
- 2007年(宙組)蘭寿とむ/北翔海莉
- 2007年(宙組)蘭寿とむ(全国ツアー)
- 2016年(宙組)真風涼帆(全国ツアー)
- 2023年(星組)瀬央ゆりあ(全国ツアー)
初演は1976年、榛名由梨さんのトップお披露目公演で、
当時大劇場で観劇して、とても記憶に残っている作品です。
2007年の大和悠河さん主演の宙組公演は映像でしか拝見していませんが、
ラモン役は、蘭寿とむさんと北翔海莉さんが役替わりで演じられていました。
再び観劇したのは、2016年の朝夏まなとさん主演の宙組全国ツアー公演。
実際に観劇した順みつきさんと真風涼帆さんのラモンは
全く違う趣だったので驚きましたが、それぞれに個性があって魅力的でした。
順みつきさんのラモンは、ラテン的な情熱を持ったとにかく熱い男!
一方真風さんのラモンは、ラテン的というよりクールで、情熱は心に秘めている感じが印象的でした。
体感的な熱さ度合いは、順みつき→蘭寿とむ→北翔海莉→真風涼帆という印象です。
どんな役でも演じる人によって見え方が変わってくるのは当たり前ですが、
特にラモンという役は、演じる人によって人物像のイメージがかなり違ってくるので、
生徒さんにとっては、やりがいのある魅力的な役でしょうね。
瀬央ゆりあのラモン
瀬央さんはどんなラモンを演じるのか、とても楽しみにしていました。
瀬央さんのイメージは『デビュタント』や『龍の宮物語』の頃は
正統派の男役で黒燕尾を端正に着こなす、というものだったのですが、
『ディミトリ』のジャラルッディーンで、私が思い描く瀬央さんの印象が大きく変わりました。
大人の包容力を身につけた瀬央さんのラモンは
どちらかと言えば、真風さんのラモンに近いイメージかな?と想像していたのですが…
ビジュアルは思っていた以上にラテン男の仕上がり!
お芝居も情熱的な熱い男のラモンで、真風さんよりは順みつきさんに近くて意外でした。
個人的な見どころは、けがをしたかもしれないフェルナンドを訪ねようとして訪ねられないイサベラと出会う場面で
つらさと悲しみからすがってきたイサベラを抱きしめようかと躊躇するラモンの右手の芝居です。
ラモンの心情が、右手一本だけで表現されていて本当に胸に迫ってきました…!
専科に組替えが決まっている瀬央さんですが、今回のラモンでも見せてくれたワイルドな魅力も加わって、
これからますます素敵な姿を見せてくれるに違いありません。
組を越えてのコンビネーションも楽しめそうで、さらに期待が高まりますね。
組替え後も、引き続き瀬央さんを応援していきたいと思います!
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