花組バウホール公演『舞姫』の千秋楽おめでとうございます!
無事完走できて良かったですね。徐々にコロナ禍以前に戻りつつあるようで嬉しいです。
千秋楽公演を配信で視聴しましたので、感想をお話ししたいと思います。
全体の感想
森鴎外の初期の傑作『舞姫』をもとに、植田景子先生が脚本・演出でミュージカル化した作品。
2007年に花組バウホール公演として上演された作品の再演ですが、初演は観ておらず、今回が初めてでした。
全体的に丁寧に描かれていて、お話の内容はとてもわかりやすかったです。
主人公の豊太郎が愛と祖国のはざまで苦悩する姿や、
豊太郎の心が周りの人物たちのセリフで徐々に変化していく描かれ方も説得力があって、
豊太郎の心情の変化も自然に受け入れられました。
西洋の文明が急激に入って来た明治時代という時代背景も、ドラマティックな物語になる一因だったと思います。
キャスト別の感想
聖乃あすか(太田 豊太郎)
本作の画像が公開された際には、聖乃さんのあまりに美しすぎる姿に物足りなさを感じていたのですが…
幕が開いてスポットライトが聖乃さんの表情を照らし出した瞬間、美しい…!と感嘆してしまいました。
本当にお綺麗な顔立ちですよね…!
今回は軍服を着ていても戦闘シーンがあるわけではなく、心情を伝えるお芝居だったので、
画像を見たときに感じたような女性らしさは特に気になりませんでした。
その美しい表情でのお芝居は、オーバーアクションにならず、抑制の効いた自然な演技でとても良かったです!
歌唱の場面では、最初の方のナンバーで声のかすれが気になりました。
後半は少し持ち直したようでしたが、やはり千秋楽ということで喉に疲れが出たのでしょうか。。
配信もされる千秋楽の不調ということで、聖乃さんもどれだけ悔しいだろう…と思い、応援するような気持ちで見ていました。
もう一つ気になったことがありまして…
ヘアスタイルの額周りの仕上げ方が、不自然な気がしてしまいました。
もう少し自然に描いた方がよいのでは…?
舞台を観客席から見ればちょうどいい具合かもしれないので、配信ではあるあるなのかもしれません。
でもやっぱり気になったので、宝塚の公式HPに掲載されている聖乃さんのプロフィール写真を確認してみたら、
こちらもやはり額周りが不自然だな…と思ってしまいました。。
美羽愛(エリス・ワイゲルト)
エリスに抱いていた個人的なイメージとは少し違う、美羽さんのエリス像でした。
繊細で儚げなというより、純粋で無垢なイメージがより強調されていたようで。。
可愛らしさは十分あったのですが、豊太郎をそこまでの気持ちにさせる説得力がもう少しあればよかったです。
帆純まひろ(相沢 謙吉)
後半、エリスを説得するところの演技が、心に迫ってきてとても良かったです。
豊太郎が困難に陥ったときも常に支える、心優しい友人役を好演していました。
侑輝大弥(馳 芳次郎)
2022年の全国ツアー『フィレンツェに燃える』のロベルト役がとても印象的でしたが、
今回も存在感ある演技を見せてくれました。
タフな感じと繊細な心の動きの両方を上手く演じられていて、
やや粗削りな感じもこれからの魅力に繋がっていけばいいなと。
花組の男役さんはシュッとしたイメージの男役さんが多い印象なので、より男っぽい男役の一人としてこれから期待しています!
和海しょう(ドクトル・フォン・ヴィーゼ)
日本に滞在経験を持つ法学博士で、豊太郎の師・良き理解者として好演。
和海さんの声にはいつも温かみを感じていたのですが、その声が温厚な人柄をよりよく表していました。
泉まいら(岩井 直孝)
衛生学を学ぶ国費留学生の軍医。
小心で気の弱い性格を、落ち着かない身体の動きで上手に表現されていました。
小心者だけどいい人なのがよく伝わってくる演技で、チャーミングな表情がとても印象的でした。
詩希すみれ(太田 清)
豊太郎の妹。武士の家柄で厳しく育てられた女性らしさが、凛とした美しい姿と話し方に出ていました。
詩希さんがエリスを演じても素敵だったのでは…?
そのクールな美しさで、美羽さんのエリスとは全く違う方向から
説得力のあるエリス像を見せてくれたのではないでしょうか。
専科の一樹千尋さんは、いつもながらの安定感と深みのある演技を見せてくれ、
同じく専科の万里柚美さんも、エリスの母としてベテランらしい情のある演技がとても良かったです。
専科のお二人の演技でお芝居全体がさらに奥行のあるものになっていて、
繊細で情緒的なものを随所に感じられる、植田景子先生らしい作品となっていました。
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