少し前のことになりますが、星組の全国ツアー公演で『バレンシアの熱い花』が
専科の凪七瑠海さん主演で再演されると発表がありました。
なぜ凪七さんが今、このタイミングとこの作品で主演されるのか…?ということも気にはなるのですが、
このお話は私にとって特別な思い入れがある作品で…
再演を聞いてちょっと複雑な気持ちになっています。
初演版『バレンシアの熱い花』
実は、私が十代の少女の頃、一番好きだった宝塚の作品が『バレンシアの熱い花』でした。
初演の記憶ですが、主役のフェルナンドを榛名由梨さん、ロドリーゴを瀬戸内美八さん、ラモンを順みつきさんが演じていました。
男女の愛の機微などわかるわけも無い年頃でしたが、
最後のフェルナンドのセリフには熱く感動し、
劇中に流れる美しいメロディーが大好きで、今でも歌えるくらいです。
フェルナンドが仲間と共に復讐を果たす姿は、男役らしいカッコよさにあふれていて、
宝塚の作品の中でもかなり上位に入る名作だと思っていました。
…2016年に宙組の再演を観るまでは。。
再演で感じた違和感
長いブランクを経て2011年から宝塚観劇を再開したので、
2016年に宙組の全国ツアーで『バレンシアの熱い花』が再演されると聞いたときは本当に嬉しくて!
ワクワクした気持ちで公演を観に行きました。
ところが…
最後のフェルナンドのセリフを聞いたとき、
なんで一番好きな人を選ぼうとしないのか!?
と怒りにも近い感情がわいてきたのです。
初演ではあれほど感動したのに…
初演から40年以上たって、身分、家柄、人種、男女差などの差別に関する意識が、私個人の中でも知らないうちに変化していたことに気づかされました。
1970年代では、まだまだ当たり前のように受け止められていた男女間の意識の違いや女性の貞操感、身分の違いなどに、
明らかに拒否感を感じたのです。
十代の頃にそう感じなかったのは、それが当時の社会通念として広く浸透していたからなのですね。
私でさえそう感じたのですから、若い観客の方たちはもっと強くそう感じたことでしょう。。
作品の時代設定は昔でも、それを観る観客はやはり現代の心で観ます。
その時代では仕方なかったことだと、理屈ではわかるのですが。。
初演ではあれほど魅力的に見えた主人公に、まったく魅力を感じなくなってしまったのは悲しいことでした。
再演の難しさ
先日花組の全国ツアー公演で、同じく柴田先生の『フィレンツェに燃える』を観劇したときにも感じたのですが、
柴田先生の作品の根底には柴田先生がお持ちの美学とかロマンのようなものが存在しています。
昭和の時代にはそれが美しいものとして受け入れられ、感動を呼び起こしたのですが…
半世紀近く経った今、観る側の価値観や良識がずいぶん変化しているので、
初演当時の内容をそのまま再演しても、かえって柴田先生の作品の良さを損なう気がします。
次回の星組版を演出される中村暁先生は、どのように演出されるのでしょうか…
大胆な演出で柴田作品の良さを生かし、その美しい世界観を現代にあった形で蘇らせてくれることを期待しながら、再演を待ちたいと思います。
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