ようやく月組の『フリューゲル―君がくれた翼―』を観劇することができました。
シリアスなのかコメディなのか、ポスターからは内容が想像しにくく、
どんな作品なんだろう…と思っていましたが、思ったより良作で、いい意味で驚きでした!
全体の感想
鳴り物入りで上演される海外ミュージカルも良いですが、オリジナルにはオリジナルの良さがありますよね。
今回の『フリューゲル』はテーマ性もありながら、
シリアス・コメディ・ハートウォーミングと上手くブレンドされていて、
物語としての破綻もなく、大変わかりやすかったです。
主人公のキャラクターが月城さんにぴったりで、その魅力を最大限に引き出せるあてがきの良さを再認識しました。
盆の中央に作られた壁によって分断されたベルリンの街を表していましたが、これが素晴らしい演出で!
グルグル回る盆を見ていると、東西ドイツの民衆のうねりのようなものが感じられました。
思っていた以上にコメディ的な部分も多く、後方席の方にはものすごくウケていてびっくり。。
ライトが突然ピンクに変わったり、若干昭和的な雰囲気だったのですが、これが斎藤義正ワールドなんですかね。
舞台は戦後の分断されたドイツでしたが、戦争は終わっても悲劇は続くことを思い知らされました。
私は娯楽として観劇を楽しんでいるので、戦争の悲惨さを思い知らされる作品はつらいのですが、
今回の『フリューゲル』は悲惨さが含まれつつも
全体的にはハートウォーミングな仕上がりだったのがとても良くて、
ここ数年のオリジナル作品の中ではかなり良作な方だと感じました。
キャスト別の感想
月城かなと(ヨナス・ハインリッヒ)
月城さんが持つ温かみのある優しさが、ヨナスにも十分に反映されていて魅力的な人物になっていました。
東側の軍人として、その思想にきっちりと従っている生真面目さがあるのに、
アフガニスタンで助けた女性を西側へ脱出させる。
矛盾する行いですが、違和感を感じさせないのは、月城さんの役作りとお人柄がにじみ出た結果ですね!
補正に関して、軍服の腰回りをもう少し絞った方がいいように思いましたが…
たくましく見えて良い!と思う方もたくさんいるかもしれませんね。
海乃美月(ナディア・シュナイダー)
西ドイツのスター歌手。最初に登場したときには、ロック寄りのポップシンガーかと思いましたが、
最後の方は昭和アイドルのような白いドレスで、衣装に一貫性がなくちょっと微妙だと思ってしまいました。
しっとりした女性の役が得意なのかと思っていた海乃さんですが、
今回のはじけた性格の女性も意外とぴったり合っていたのには驚きました。
海乃さん自身が演じることを楽しんでいるように感じられて、こちらも楽しい気分になりました!
鳳月杏(ヘルムート・ヴォルフ)
ずっとニヒルな鳳月さんですが、軍服の着こなしもスマートで本当にカッコいいです。
憎まれポジションですが、色気ある大人の男感が隠し切れません!…いつものことですね。
人事的にはいろいろと言われてはいますが、大人の男を演じられる男役として、
短期でも月城さんのポジションをついでほしいと思っています。
風間柚乃(ルイス・ヴァグナー)
海乃さんのマネージャー役。
どんな役でも、しっかり自分のものにしてくるところは本当にさすがです。
唐突な感じの演出もあってびっくりした場面もあったのですが、
全体的に演技は風間さんらしいユーモアと魅力にあふれていて、
終わってみれば納得のお芝居はやはり安心安定の風間さんでした。
その他の方々
礼華はる・英かおと
月城さんの後ろにいつも控えている、礼華さんと英さんがいい味を出していて、
二人とも長身でカッコよく、さらに真ん中には月城さんがいて、本当に眼福な三人並びでした!
彩海せら
セリフが少ないながらも目立つ役どころで存在感を示していました。
繊細な心の動きが、表情にうまく出ていてとてもよかったです。
彩みちる
上級生になっても可愛らしい演技ができる貴重な娘役さんです。
最近さらに可愛らしさに磨きがかかっているような気がします…!
梨華ますみ
東ドイツの文化庁広報部長ゾフィア役でしたが、落ち着いたトーンの声色は上級生ならではでしたね。
ただ、金髪のウェービーロングの髪型とハイヒールのパンプスが、役のイメージに合わないように感じました。
いろいろ言ってきましたが、失礼ながら思いのほか良くて、
できるなら再観劇したいと思わせるとても良い作品でした!
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