宝塚の男役とリアルな男性の違い

宝塚といえば、美しい男役。

本当は女性であることをうっかり忘れてしまうような、

まるで実在する男性かのような役作りに胸キュンとなることも多いですよね。

そんな宝塚の男役と、リアルな男性の違いについて感じたことをお話しします。

元男役とリアルな男性が並んだ結果

まさに理想の男性…！と何度も思わせてくれた男役の一人である元宙組トップスター真風涼帆さんが、

退団後に初めて出演されたミュージカル『LUPIN~カリオストロ伯爵夫人の秘密～』。

本作では主役であるルパンの古川雄大さんと、カリオストロ伯爵夫人の真風涼帆さんが

同じ衣装で同時に登場する場面があります。

昨年11月に帝国劇場で観劇し、その後大阪でも何度か観劇して、

究極の男役とも言われた真風さんと、リアルな男性である古川雄大さんを

同じ衣装かつ並んだ状態でよく比較できてしまった結果、

改めて宝塚は夢であり、虚構の世界であることを痛いほど思い知らされました。

もちろん宝塚は虚構ということを分かったうえで楽しんではいるのですが、

こうも違うものかと。。

補正の目指すところ

そう痛感させられたシーンは２つありました。

１つは黒燕尾で登場するパーティーの場面。

お互い黒燕尾でダンスをしながら、古川さんが真風さんの手を取り「柔らかい手だ」と言うと

真風さんが「働いたことがないもので」と応える場面です。

真風さんが２番手時代に『神々の土地』で演じた、

働かない貴族のフェリックス・ユスポフみたいな感じと思っていただければ。

そしてもう１つは、２人がシルクハットに颯爽とマントを翻したルパンの姿で出てくる場面。

古川さんと真風さんは同じようにカッコよく、身長もそう変わらないのですが、決定的な違いがありました。

それは全身のフォルムと質量感です。

古川さんは、身体に厚みがあって逞しく、しっかりした骨格は安定感抜群。

対する真風さんはスラリとスマートで、全く重みを感じさせないところが大きく異なりました。

宝塚時代の真風さんは男役の補正が完璧で、

ひょろっとしたリアルな男性など足元にも及ばないほど逞しいフォルムでしたが、

今回の古川さんの安定感抜群な感じとは全く異なっていたように感じました。

宝塚の補正のフォルムはリアルな男性を目指したものではなく、

あくまで虚構の「理想の素敵な男性」を目指したものなのですね。

男役の所作の美しさ

古川さんが何気なくソファに座ったとき、宝塚の男役とリアルな男性の決定的な違いを感じました。

脚を組まず、ごく普通に腰を落とすのですが、かかとが身体の方に寄っている！

普通に座ったらそうなるのですが、男役は絶対そんな座り方はしませんよね。

これでは膝から下がとても短く見えてしまうため、

かかとは膝の位置より前にもっていくように座るでしょう。

リアルな男性はそんなことまで考えていませんよね。

宝塚では当たり前すぎて気付きにくいですが、

男役として美しく見えるような工夫がかなり細部に至るまで本当にたくさん、

さり気なく散りばめられているということを改めて強く感じました。

男役10年と言われるのも納得です。

古川さんが、カリオストロ伯爵夫人でダブルキャストの柚希礼音さんと真風さんに、

ダンス場面での所作について質問されたというお話を聞きましたが、

古川さんも、宝塚の男役の所作の美しさを感じられたからこそ質問されたのでしょう。

リアルな男性が男役の所作を身につけたら…完璧！となりそうですが、

リアル感があるからこその魅力もあるので、単純には判断できなそうです。。

結論、宝塚の男役もリアルな男性も、それぞれのカッコよさがあるという

当たり前のことに今さら改めて気づいただけでした。