『カジノ・ロワイヤル』大劇場千秋楽まで、あと1週間ほどとなり、真風さんのご卒業が近づいてきていますね。
今では大人の包容力ある男役としてその姿を確立し、「究極の男役」とまで言われるようになりましたが、意外とコメディセンスに溢れています。
今日は、真風涼帆退団企画②として、真風さんのコメディセンスについてお話ししたいと思います!
星組時代
星組時代は、レジェンドと称された柚希礼音さんや、個性たっぷりの紅ゆずるさんの下で、かわいい弟ポジションでした。
2011年の『めぐり会いは再び』の劇作家エルモクラートや、2012年の『ダンサセレナータ』のルイスで、真風さんのコメディエンヌぶりを見ることができます。
頼りなくて、ちょっと情けない感じが、スマートなビジュアルと相反してクスッと笑ってしまう感じ。
笑いを取るための大仰な演技でなく、真風さん自身のセンスから滲み出るものと言ったらいいのでしょうか。
その片鱗は、下級生の頃に抜擢された『ブエノスアイレスの風』でも、少しですが感じることができます。
この作品は正塚晴彦先生作・演出のシリアスな内容で、
真風さんが演じるマルセーロはチンピラでどうしようもない悪いヤツなのですが、その演技に時折軽い可笑しみがあって印象的でした。
また、お芝居ではないので番外編としてですが…
弟ポジションの真風さんでしたが、柚希礼音さんのディナーショーでは、
柚希さん、紅ゆずるさん、二人の上級生を立てつつも鋭いツッコミを入れていました。
その流れが周りの空気を壊すことなく自然で、頭のいい人だなと感心したのを覚えています。
そういうところがお芝居のコメディセンスにも通じているのでしょうね。
真風さんは熊本ご出身ですが、関西のお笑い文化で育った柚希さんと紅さんという濃いキャラクターの方々を相手にしながらも
見事に馴染んで場を盛り上げていて、本当に楽しいディナーショーとなっていました。
あのお二人を相手に、本当にすごいですよね…!
宙組2番手時代
星組時代は「若くて頼りないところから出てくるおかしさ」のようなコメディ場面が多かったですが、
宙組へ組替えされてからは等身大のおかしさを感じる場面が増えてきました。
『メランコリック・ジゴロ』は、その代表作と言っていいでしょう。
一瞬の間をおいて、「ダニエルです!」という一言セリフのおかしさは必見!
トップスターの朝夏まなとさんと2番手の真風さんとの絶妙なやりとりがたくさんあって、とても楽しい作品で、
多くの場面でセリフの間の取り方に、真風さんのコメディセンスを感じられる作品です。
『Shakespeare』のジョージ・ケアリーや『ヴァンパイア・サクセション』のシドニー・アルカードは、
色気ある魅力たっぷりな男役としての演技を見せてくれるのですが、その中で見せるのは、とぼけたおかしさ。
もちろん演技の部分もあるのですが、表面的な演技だけでは出せない持ち前の性質、センスを感じます。
『バレンシアの熱い花』のラモン・カルドスも同様です。
私の中では、ラモン役は初演の順みつきさんのイメージが本当に強くて、スタイリッシュな真風さんは、ちょっと違うのではないかと思っていたのですが、
実際に観てみると、真風さんのコメディセンスをたくさん感じて、順みつきさんとは違うまた新しいラモン像が出来上がっていました。
『王妃の館』のルイ14世にいたっては、もう真風さん自身が、コメディを演じていることを本当に楽しんでいるようで、
それが観ている方にまで伝わってきて、さらに楽しくなってくるという感じでした。
こうやって振り返ってみると、宙組の二番手時代は真風さんのコメディセンスを感じる作品が結構ありましたね。
トップスター就任後
トップになってからは本格的なコメディ作品がなかったので、一度は観てみたいと思っていました。
退団公演の『カジノ・ロワイヤル』はコメディ要素が多い作品ですが、真風さんはあくまでもスタイリッシュでかっこいいジェームズ・ボンド。
そんな真風さんのセリフで大きな笑いが起きる場面があります。
潤花さん演じるデルフィーヌと共に、芹香斗亜さん演じるル・シッフルに地下牢へ連れて行かれそうになるのですが、
「俺は残りたいから残るんだ」「君を一人にはできない」と、文字にすれば全く面白くないセリフなのに
絶妙なセリフまわしと間の取り方でとても面白い場面になっていて、真風さんのコメディセンスを感じられる貴重な場面となっています。
振り返って思うのは、真風さんの笑いには、いつもご本人の性格の温かさが感じられるのが魅力だったなとしみじみ思いました。
もう宝塚で、真風さん主演のコメディ作品を観ることは出来ませんが、
退団公演が宙組全員で作り上げられた、明るく楽しい作品で本当によかったと思います!
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