星組『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』の2日目を、本当にラッキーなことにe+の貸切公演で観劇することができました。
礼真琴さん主演のフレンチロックミュージカルを、座席数898席のシアタードラマシティで上演とは…なんて贅沢!
本当に感動的な素晴らしい空間でしたので、感想をお話ししたいと思います。
全体の感想
『赤と黒』の原作はフランスの文豪スタンダールの長編小説で、宝塚でも柴田侑宏先生の脚本・演出で有名ですが、
今回の星組公演は2016年にパリで初演されたフレンチロックミュージカルを、谷貴矢先生が潤色・演出されたものです。
予習のため、YouTubeでフランスで公演されたものを見てから観劇に臨みました。
今回の宝塚版はフランス版と同じようなストーリー展開でしたが、
フィナーレで礼さん・有沙瞳さん・詩ちづるさんの3人でのダンスや、
劇中で礼さんの歌に合わせて暁千星さんが踊ったり、様々な場面で下級生たちが踊るなど
多くのダンス場面が追加されていて、より見ごたえのある感じになっていました。
まず最初に響いてきたのは、力強いドラムのリズムを感じるロックミュージック。
フレンチロックミュージックは、ロックらしいダイナミックさに美しいメロディが重なった感じです。
そんなナンバーを礼さんの繊細かつ力強い歌唱力で堪能できる。しかもそれほど広くない劇場で。
もう劇場の空気が濃縮されたような、素晴らしい空間でした…!
ストーリーは、礼さん演じるジュリアンと有沙さん演じるルイーズ(レナール夫人)、
詩さん演じるマチルドの恋愛模様を軸に、ジュリアンの生きることへの焦燥感を描いています。
印象的なジュリアンのセリフは、「私は二つの罪を犯した。一つは富や名声、全てを求めたこと。そしてもう一つは愛を求めたこと。」
自ら死刑を求めた際の言葉ですが、礼さんの迫真の熱演に、もうとにかく圧倒されてしまいました。
歌とダンスがお上手過ぎるため、それらに注目しがちですが、お芝居もさすがの一言!
改めてオールラウンドプレーヤーであることを認識させられました。
ここは「罪」という言葉に、宗教的バックグラウンドがないと理解しにくい気もしますが、
暁さん演じるジェロニモの「彼は愛によって富と名声を得、愛によって富と名声を失った」というシンプルでわかりやすいセリフが表しているように、
この作品は深く考えず浴びるように音楽を感じ、目に入って来る色彩や光を楽しむのが正解なんだと思います。
全体を通して本当に音楽が素晴らしく、タイトルどおり赤と黒の色彩が背景や衣装に効果的に使われていて、照明がさらにそれらを際立たせていました。
特に一幕最後で、全体が赤いドラマティックな照明の中で歌う礼さんの歌声とその姿には、心が震えました…!
個人の感想
礼真琴(ジュリアン)
もうわかっていたことですが、迫力ある素晴らしい歌唱力!
宝塚の枠にとらわれないで、どんどん進化しているよう。
襟足や耳の周りの髪を短くカットされていて、とても精悍な感じで、ジュリアンの野望ある青年像にぴったりでした。
暁千星(ジェロニモ)
ストーリーテラーなのですが、劇中で歌手としての役もあり、出番が本当に多く存在感がありました。
歌はもちろんですが、キレのあるダンスも本当にカッコいい!
客席と会話をしながらユーモアある演技も見せ、余裕とともに華やかさやオーラも増してきたようです。
主人公はジュリアンなのですが、ジェロニモは想像していた以上に重要な役どころだったので、
礼さんと暁さんで、ジュリアンとジェロニモを役替わりでやっても面白かったのでは?と思いました。
有沙瞳(ルイーズ)
星組でルイーズを演じるなら、有沙さんしかいないでしょう。
歌唱面はもちろん、しっとりした大人の女性を演じられるのは彼女しかいないと思っていましたが、まさに適役でした。
詩ちづる(マチルド)
勝気なマチルドを好演していました。
ときおり面差しが、同じくマチルドを演じた夢咲ねねさんに似ているように思いました。
ひろ香祐(ムッシュー・ヴァルノ)
彼のせいでジュリアンが悲劇へと向かってしまうのですが、
成り上がりの悪者感がにじみ出る演技で、とてもお上手でした。
小桜ほのか(ヴァルノ夫人)
成り上がりのヴァルノの妻らしく、下品なほどに派手なドレス姿。
「人の犠牲の上に成り立つ幸せは当然」という表情は、何の罪悪感も感じさせず自然で見事でした。
出演者全員が歌唱力のある生徒さんばかりで、とにかく耳福な公演でした。
次回の星組大劇場公演は『1789-バスティーユの恋人たち-』。
礼さん率いる星組で再びフレンチロックミュージカルを観られるなんて、楽しみでしかありませんね!
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