いつもなら観劇後、感動したり印象に残ったりした具体的なシーンがいくつも思い浮かんできます。
ところが今回の宙組『カジノ・ロワイヤル』では、感動ポイントはたくさんあるのですが、
なんだか考えがまとまらず、これがいわゆる贔屓の退団公演なのかと。。
真風さんが好きすぎて、冷静に作品を判断できていないのかもしれません…。
今日は、トップスターの退団公演についてお話ししたいと思います。
退団公演に良作なし
「退団公演に良作なし」という言葉を初めて聞いたのは、2015年の柚希礼音さんの退団公演『黒豹の如く』のときでした。
ラッキーなことに大劇場公演の初日を観劇できることになり、それはそれは期待していました。
何しろ昭和の時代に数々の名作を生み出した、宝塚の宝のような名演出家であるあの柴田侑宏先生が、超久しぶりに発表なさる新作でしたから。
ところが、観劇後の正直な感想は「期待はずれ」。
私の思いが顔に出ていたのか、東京から遠征してきたという隣の席の女性が「どうです?この作品…ねぇ」と話しかけてきて、
幕間の間ずっと二人で『黒豹の如く』への無念をおしゃべりしたという楽しい思い出があるのですが…
この作品の印象は、とにかく「感覚が時代に合っていない」でした。
使う言葉が昭和のままなので(古い日活映画のような昭和感)感情移入しにくく、
そんな言葉で語るキャストの思いに共感しにくいという感じ。
同じ思いの人が多くいたのか、観劇後に見た何かで「退団公演に良作なし」というフレーズを知った次第です。
宝塚100周年を支え、絶大な人気を誇り、レジェンドとまで称された柚希さんを送り出す作品は、最大の賛辞を込めた作品でなくてはならない…
そんな劇団の思いの結果が、柴田先生のご登板だったのでしょう。
宝塚の重鎮、柴田先生をも動かした柚希さんということで、さすがレジェンド!と感じた人も多かったとは思います。
でもやはり、作品の内容はもう少しどうにかならなかったものか…
時代設定が昔の作品は今でもよくあることなのに、あまり違和感を感じないのは、
演出によって現代の感覚が上手に取り入れられているからなのですね。
退団公演に良作あり
退団公演にだって感動的な良作はありました。
最近では月組の珠城りょうさんの退団公演『桜嵐記』や、
宙組の朝夏まなとさんの退団公演『神々の土地』などは、本当に感動的かつ美しい、記憶に残る素晴らしい作品でした。
どちらの作品もヒット作品を連発していた上田久美子先生の作品ですが、昔ながらの退団公演のような特別な演出はあまりなかった印象です。
作品自体の余韻が大きく、トップスターへのフォーカスが、よく観る退団公演より少なかったような。
もちろんトップスターの登場場面はたくさんありましたが、あくまでも通常の退団公演と比較しての印象です。
勝手な思い込みかもしれませんが、退団公演のエンディングは
ハットにトレンチコートを着たトップスターが、一人で去って行くのが王道パターン。
それは宝塚を象徴する男役の美学を最後に表現してもらいたいという、退団するトップスターへの演出家の先生の愛情だと思うのですが、
そのエンディングに導くための脚本だからストーリーに融通がきかず、良作になりにくいのか…
そんなこだわりを持たずに創作されたら、もっと良作は増えるかもしれませんが、
そうなると退団公演というアピールは弱まりそうだし、兼ね合いが難しいですね。
さて「究極の男役」と称される真風涼帆さんの退団公演『カジノ・ロワイヤル』ではどう感じたか…
長くなりそうなので、また別の機会にお話ししようと思います!
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